消費者がブランドに興味を持ったり、商品を購入したいと思うとき、まず最初にデジタルチャネルからスタートするようになりました。そのためブランドは、消費者にリーチするためには、あらゆるデジタルチャネルを使って、彼らにとって意味があり、関連性がある方法や内容でコミュニケーションを図る必要があります。これはマーケターにとって課題である一方で、大規模に展開できるチャンスでもあるのです。

うまくすれば、ブランドは地域や時差だけでなく言語すら超えて、膨大な顧客や見込み客とのコミュニケーションが可能になります。

このような背景から、パーソナライゼーションはマーケターにとって不可欠な要素であり、顧客一人一人との関わり方を適切で意味のあるものにする方法となっています。同様の理由で、eコマースのカスタマージャーニーにおいてもパーソナライゼーションがますます重要になっています。適切なパーソナライゼーションの実現には多くの要因が絡みますが、その中でも特に重要なのがセグメンテーションです。

本ブログでは、今日のeコマースビジネスにセグメンテーションがなぜそれほど重要なのかを考察します。

セグメントとペルソナの違い

まずはいくつかの用語の定義から始めましょう。



セグメント

セグメントとは、同様の特性を持つユーザーをグループでまとめることです。業種、地域、ニーズ、カスタマージャーニーのステージなどでグループ化されます。例えば、欧州人、男性、ビジネスプロフェッショナル、45~55歳といった具合です。 グループにまとめることで、ユーザーがメリットを得られるような類似の体験を創出することができます。



ペルソナ

ペルソナとは、調査や顧客データ、あるいはその両方に基づいて作成した、架空の顧客像のことです。ペルソナが異なれば、目標、コミュニケーションスタイル、感情的なニーズ、行動、カスタマージャーニーなども違ってきます。

例としてハビエルという架空の人物について考えてみましょう。47歳のスペイン人のエンジニアで、経営幹部を目指しており、サイクリングと料理が趣味で、動画よりテキストのコンテンツを好みます。

ユーザーエクスペリエンスやカスタマージャーニーを設定する際の指針として、ペルソナが用いられます。ハビエルというペルソナに基づくセグメントに当てはまるユーザーには、3分の製品動画を見せるより、2分以内で読める製品説明を提示するほうがよいでしょう。

上記の各グループの定義は、ビジネスモデル(B2B、B2C、B2X)、販売対象(製品、ソリューション、またはその両方)、市場(地域、国内、グローバル)といった条件によって、各ビジネスに固有のものとなります。

ここで大切なのは、セグメントは顧客をまとめる方法であり、ペルソナは各セグメントにどのようにアプローチするかを把握するのに役立つツールであるということです。パーソナライゼーションのジャーニーにおいては、各グループを定義することが極めて重要です。



今日のコマース市場においてセグメントとペルソナが重要である理由

セグメントとペルソナはどのビジネスでも重要ですが、現在、変化の激しいコマース市場においては極めて重要となります。

近年のコマースにおける最大の変革は、おそらくマーケットプレイスでしょう。マーケットプレイスは、購買者からサプライヤーへと注文が直接流れるシームレスな注文体験を提供しつつ、需要と供給のデータを収集してひもづける、オープンなネットワークです。この定義は抽象的かもしれませんが、誰もがマーケットプレイスとはどのようなのものかを知っています。その代表がAmazonです。

B2Cの分野だけでなく、B2Bの分野も変革が進んでいます。2020年にB2Bのオンラインマーケットプレイスは、全世界のオンラインB2B売上高の7%を牽引しました。iBe TSDの調査では、2024年までに全世界のオンラインB2B売上高の約30%を牽引するようになると予想されています。これは、今まさに起きている大きな変化です。マーケットプレイスのネットワーク効果によって、あらゆるビジネスに変革がもたらされているのです

ネットワーク効果とは、ある製品やサービスのユーザー基盤が拡大するほど、その製品やサービスの利用価値も向上することを指す用語です。簡単に言えば、ユーザーが増えるほど価値が高まるということです。

時代の先端を行く企業は、自社の製品ラインをAmazonのようなマーケットプレイスに展開したり、Music Go Roundのような独自のマーケットプレイスを構築したりして、ネットワーク効果を活用しています。あるいは、フランチャイズのように、オーナーやスタッフが販売業者やサプライヤーと直接つながれるテクノロジーを活用して自社がマーケットプレイスとなり、中間業者の必要性をなくしている例もあります。

ここ数年はAmazonのビジネスに対する見方が厳しくなっているものの、消費者は便利さを最大の理由として利用しています。2日以内の発送は大きな成功要因ですが、もう一つの重要な要素はキュレーションです。

Amazonはユーザーのことをよく理解しており、商品や体験のキュレーションを適切に行うことができます。これにユーザーは期待しています。何でもAmazonで買おうと思うわけではないでしょうが、他の企業がAmazonに匹敵する体験を提供できるようになるまで、多くの人は自分の靴でもビジネス用ソリューションでもAmazonで購入し続けるでしょう。

企業が、マーケットプレイス、従来型のコマースモデル、あるいはその2つの混合モデルを運営している場合、顧客は自分が必要としているものを見つけるためのサポートを期待します。何千万点もの商品と何万人もの販売業者を擁するマーケットプレイスともなると、セグメンテーションが必要不可欠です。非常に効率的なフィルターがあったとしても、誰もそのフィルターを利用して探す時間はありません。ペルソナも、セグメントの共感を得るカスタマージャーニーの管理と自動化を可能にすることから、同様に重要です。

現時点ではネットワーク効果やマーケットプレイスに関心がないかもしれませんが、今後は気に掛ける必要があるかもしれません。いずれにしても、今セグメンテーションを正しく行っておけば、将来的にいつどのようにビジネスが成長しても役立ちます。



「1対1型のセグメント」だけでは不十分

今日のマーケターやマーケティング書籍からは、従来のセグメンテーションは過去のものになったとされています。これは「1対1型のセグメント」に関して言えるもので、ある程度は正しいと言えます。

例えば、Sitecore Discoverを利用すれば、「1対1型のセグメント」としてサイトユーザーとのエンゲージメントが可能です。サイトで「ショートパンツ」を検索したユーザーがいたとします。過去の履歴と製品カテゴリーのトレンド人気から、最初はメンズ用ショートパンツが表示されるかもしれません。

しかし、同じユーザーが「レディース用ショートパンツ」と入力すると、Sitecore DiscoverのAIは素早く性別を切り替え、ユーザーの購買意欲をリアルタイムに反映するために体験を調整します。さらにユーザーがクリックを続けると、レコメンデーションと検索結果の精度が高まります。

これはシンプルなことに見えるものの、このような体験を実現するためのアルゴリズムを考えると、実は非常に高度なAIが必要であることが分かります。

ただし、Sitecore Discoverがコマースサイトで稼働していても、その先のカスタマージャーニーの管理と自動化を行うためには、さらにセグメンテーションが必要です。今日のカスタマージャーニーの大半はクロスチャネルであり、セグメンテーションはそれらのカスタマージャーニーのつながりと関連性を確保する最善の方法です。目標は、あらゆるチャネルをまたいだ1対1のパーソナライゼーションでであり、クロスチャネルのデータ収集、管理と自動化、アクティベーションが不可欠です。

そこでカスタマーデータプラットフォーム(CDP)が必要となるのです。



コマースのセグメンテーションのためのCDP

CDPには通常、次の4つの機能があります。まず、(1) 既知の顧客と未知の顧客の両方から、あらゆるクリック、アクション、検索、コンバージョンに関するデータを収集し、(2) それらのデータを1カ所に集約してひもづけ、顧客それぞれの統合プロファイルを作成します。

同時にそれらのデータは、(3) セグメントの作成と精度向上にも使用されます。そして、(4) 正しいプロファイルを適切なセグメントにひもづけ、それにマッチするパーソナライズされた体験をトリガーすることで、データを活性化させます。一部のCDPは、機械学習を活用してセグメンテーションをサポートしています。Sitecore CDPのように、リアルタイムのセグメンテーションが可能なCDPもあります。

Sitecore Discoverを使用したコマースソリューションSitecore OrderCloudとCDPを組み合わせることで、サイト上での1対1のパーソナライゼーションと、あらゆるチャネルにわたる1対1のパーソナライゼーションに匹敵するパーソナライズされたカスタマージャーニーを実現できます。

Sitecoreは、企業が導入しているソリューションと容易に連携できるSaaSベースのコマースソリューションを提供しています。B2Xビジネスモデルでオムニチャネルのパーソナライゼーションを導入する場合でも、B2Bトランザクションのための柔軟なプラットフォームを検討している場合でも、コマースに関するニーズに対してSitecoreがお客様をサポートします。詳細はSitecore Commerceをご覧ください。

Dan Olson is the Senior Copywriter at Sitecore. You can follow him on LinkedIn