消費者が商品やサービスの購入決定に至るまでにはいつもの選択肢があり、企業は日々、消費者の力が増大していることを実感していることでしょう。そのような中で、「ビジネスを勝ち抜くためには、一人の人間として消費者と向き合うことが極めて重要」と消費者の84%が回答しているという調査結果がでても不思議ではありません。消費者は、人間としてではなく数字として扱われることに納得しませんし、どこにいても、自分が欲しいものを手に入れる方法があるからです。

これは消費者にとっては素晴らしいことですが、企業にとっては大きな課題です。企業が重視すべき差別化要因はカスタマーエクスペリエンスです。ほとんどの企業がそれを理解していますが、実現させている企業はごくわずかのようです。2018年の調査によると、企業の80%が「優れたカスタマーエクスペリエンスを提供している」と回答しましたが、それに同意した消費者はわずか8%でした。

昨今、「顧客中心」の考え方の広がりを背景に、企業もカスタマーエクスペリエンス実現の重要性を理解し始めているようです。同時に、かつてないほど消費者の目は厳しくなっており、一度不愉快な体験をすると3人に1人の顧客がブランドを利用しなくなり、複数回にわたり不愉快な体験をした場合には利用を中止する割合が92%に達します。

以下にカスタマーエクスペリエンスの向上に重要な3つのステップを紹介します。

1. 顧客を知る — 顧客は知ってもらうことを期待している

現在のような状況にある理由の一つとして、過去18カ月間でB2C/B2Bでの顧客の期待の変化が加速したことが挙げられます。マッキンゼーのレポートによると、2020年に米国人の約4分の3が買い物習慣を変え、40%が購入ブランドも変えていたことが明らかになりました。そのスピードは2019年の2倍に上ります。実際に、消費者の25%が「これまでよりもブランドを切り替える頻度が増えた」と回答しており、彼らの期待に見合う体験を求めています。

消費者は、自分の購入履歴や閲覧履歴に関する豊富なデータを企業が持っていることを理解しており、企業がそのデータを活用してさまざまなチャネルやコンテンツでパーソナライズされた体験を提供してくれることを期待しています。セールスフォース・ドットコムの「State of the Connected Customer」第5版によると、顧客の52%は常にパーソナライズされたオファーを期待しており、この割合は2019年の49%から上昇しています。

プライバシーに関する懸念はあるものの、消費者の61%が「お気に入りのブランドからパーソナライズされたコンテンツ提供をしてほしい」と回答しており、56%が「より関連性の高いコンテンツ提供をしてくれるなら閲覧履歴をブランド企業と共有しても構わない」と回答しています。その一方で、47%が「ほとんどの企業が自分の個人情報を自分に役立つように活用できていない」と回答しています。

セールスフォース・ドットコムが先ごろ発表した「State of Marketing」レポートによると、マーケターが使用する重要なデータソースの数は、2019年の8から2021年には12へと50%増加しています。しかし、そうしたデータソースのほとんどが関連付けられていません。

例えば、顧客がスマートフォンからタブレットやコンピュータに切り替えた時に顧客を追跡するタスクを取り上げてみましょう。購入の67%が複数のデバイスを使用した結果によるものであるにもかかわらず、マーケターの3分の2は顧客がデバイスを切り替えたことを把握できていません。企業はこうした「データの断絶」という課題を抱えています。

データの断絶を解消するには、複数のことを行う必要があります。

まず、各チャネルとタッチポイントからデータを収集できなければなりません。次に、そのデータを統合する必要があります。ただし、これはほんの手始めにすぎません。データを活用できるようにするには、データを理解しなければなりません。その1つ目のステップが、顧客プロファイルをまとめることです。顧客のWebでの行動、CRM情報、サービスチケット、モバイルアプリでの行動などを参照できる、一元管理されたものが必要です。2つ目は、顧客のセグメンテーションを行うことです。セグメントは1つにすることが大原則です。

これらの煩雑に思える作業は、どの企業も直面している課題です。これが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)市場が成長している主な理由です。CDPは、複数のデータセットを統合し、単一の顧客ビューを作成することによって、顧客ごとに360度ビューを提供するだけでなく、そのビューを高度にパーソナライズされたデジタルインタラクションに変換できます。企業のCDP導入を後押ししているのは、消費者行動の変化に対応する必要性の高まりです。

2. オムニチャネルの重要性— 関連性を持たせる

コロナ禍に伴う、大きな消費者行動の変化は、eコマースとリモートのオプションへの移行です。米国では2019年から2020年にかけて、それまでの5年間の3倍を超えるスピードでeコマースが成長を遂げました。消費者の習慣が大きく変わる中、マーケターや企業は消費者の期待に応えられるように迅速に進化し続けなければならないというプレッシャーにさらされており、この傾向はしばらく続くでしょう

  • 2023年までに、米国における小売業の売上の58%にデジタル要因が影響を及ぼすことが予想されています。
  • 消費者の48%が「主にオンラインで買い物をする予定」と回答しており、消費者の17%が「主に店頭で買い物をする予定」と回答しています。
  • 消費者の75%が「実店舗とオンラインショッピングを組み合わせて使いたい」と回答しています。

消費者は、オンラインショッピングをしたり、購入に至るまでにもオンラインチャネルを利用するなど、ますますオンラインに依存するようになっています。このことは、「カスタマーエクスペリエンス」が鍵を握るという結論に集約されます。

デジタルエンゲージメントを高めるには、パーソナライゼーションが不可欠です。デジタルプレゼンスにつながるあらゆる体験を、顧客や見込み客のそれぞれに合わせてカスタマイズしていきます。これは、レコメンデーションやオファーなど、消費者のリアルタイムの興味や意向に沿って、コンテンツを動的に表示することで実現できます。まずはWebサイトから始め、それからすべてのデジタルチャネルに取り掛かりましょう。

オムニチャネルの重要性は、どれだけ強調しても足りないほどです。消費者は今や平均で6つのタッチポイントを利用しています。また、Webサイト、アプリ、メール、ソーシャルチャネルのどこでエンゲージするかにかかわらず、顧客や見込み客は、一貫性のあるコンテンツ、メッセージ、体験を求めています。カスタマイズされたコンテンツを使用して企業とのやり取りを支援することができます。企業はそれぞれのやり取りが顧客のインサイトの収集につながり、さらに有益なデータをもたらすというように、オムニチャネルを適切に活用することで好循環が生み出されます。

上記のようなオムニチャネルでのデータの管理は最も重要な取り組みの一つになりました。トレジャーデータ/MarTech Allianceによると、マーケターが今後1年での改善を求めている分野のトップ3は以下のとおりです。

  • 物理的体験とデジタルエクスペリエンスをつなぐ(50%)
  • オムニチャネルの統合マーケティングキャンペーンを展開する(37%)
  • リアルタイムで体験を提供する(35%)

3. コンテンツ活用プロセスのスピードアップ

データの連携と有効化が実現したならば、一貫性のあるオムニチャネルエクスペリエンスを可能にする次のステップを検討します。関連性の高い一貫性のある体験、つまり多様なコンテンツによって、顧客がいるところを把握し、顧客に直接訴求することです。

もしあなたが、「顧客生涯価値を高める戦略的な鍵はコンテンツである」と回答する75%以上のエグゼクティブと同様の考えを持っていれば、「どのようにして十分なコンテンツを作成するのか」という疑問が湧くでしょう。Sitecoreでは、これを実現する方法を常に模索しています。そして、そのパズルの重要な1ピースが、チームの働きであることが分かりました。

マーケティング部門が、複数のツール、連携していないシステム、複雑なプロセスを使用していると、コラボレーションと可視性を妨げ、生産性を高めることができません。コラボレーションと可視性は緊密に関連しています。効率的なコラボレーションには、コミュニケーションやワークフローと同様に可視性が重要です。マーケティン部門のメンバーは、現在進んでいるキャンペーンのことだけでなく、そこから導かれる成果を把握している必要があります。

コンテンツのリユース、リミックス、リパーパスが極めて重要です。ただし、どのようなコンテンツがあるのかを把握していなければ再利用もできません。例えば、誰かがプレスリリースを作成したら、あなたがそこからソーシャルメディアに投稿するためにメッセージの一部を引用したいと思うでしょう。可視化は不可欠ですが、コンテンツのリユースやリパーパスを可能にするためには、モジュール化されたコンテンツの作成がより適切な方法となります。

カスタマーエクスペリエンスの向上に取り組むことは、自分が所属する組織のデジタル成熟度によって、その難易度は異なることでしょう。貴社がどのレベルにあっても、Sitecoreがお手伝いします。8,000%のROI達成サブスクリプションの115%拡大100万ドル以上のコスト削減など、Sitecoreのプラットフォームを導入した企業は、世界中でデジタルトランスフォーメーションを推進し、多くの成果を挙げています。

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Julia Gebhart is a Product Marketing Managerat Sitecore. Follow her on LinkedIn.