産業構造の変化やデジタル化の進展にともない、自動車メーカーとサービスプロバイダーの境界線が曖昧になりつつあります。カーシェアリングのようなビジネスモデルは、革新的なサービスを提供することで市場での地位を確立し、継続的に成長しています。自動車業界におけるモビリティ(交通手段、移動手段)という定義は、境界線が曖昧になっています。
モビリティ分野には、自動車だけでなく、その他の幅広い交通手段が含まれます。この分野における成功例は業界企業が相互に学ぶことができるため、オートモビリティ市場全体に大きな可能性がもたらされます。業界や地域を問わず、私たちは皆、不確実で極めて流れの速い時代におり、自動車メーカーやサプライヤーも例外ではありません。
消費者の心を動かす方法とは?
消費者は、シンプルでパーソナルなアプローチを期待しています。一方、企業は消費者の記憶に残る体験を提供できてはじめて、最後のクリックによる購入完了へと誘導できるのです。これによりカスタマージャーニーにおけるコンバージョン率が向上し、最終的には長期に渡ってロイヤルティを維持することができるのです。PwCの調査によると、消費者の32%が、嫌な経験をした場合、そのブランドとは二度と取引をしないと回答しています。消費者と継続的に対話し、フィードバックを求め、意見や体験を共有し、そのインサイトを活用してカスタマーエクスペリエンスを絶えず改善していくことが重要です。このようにして初めて、カスタマーエクスペリエンス管理は意味を持ち、長期的な顧客満足度や売上の向上につながるのです。
マーケターは、消費者と彼らの個人的な関心に常に注視することが大切です。たとえばテスラでは、ウェブサイトを最初にクリックしてから購入が完了するまで、消費者に一貫した体験を提供しています。こうしたアプローチを可能にしているのは、顧客データの最大限の活用と体験の常時最適化です。
同社ではマーケティング業務にベンチマークが設定され、常に進化しています。一方、テスラの競合企業は、画期的なビジネスモデル、パートナーエコシステム、「コネクテッドカー」などの多様なトレンドに対応しながら、テスラに追いつき、追い越すことができるでしょうか。
ボストン・コンサルティング・グループは、自動車業界について、コロナ禍の影響を受けた購買行動レポートにおいて「オンライン販売への移行は、自動車メーカーやディーラーにとって、より多くのデータを収集し、消費者の行動をよりよく理解する機会となる」と述べています。
顧客中心主義の流れは、ヘルスケアや製造業など他の業界にも見られます。従来のB2Bビジネスに加え、新たな販売チャネルとしてB2Cを段階的に開始しています。B2Bビジネスだけでなく、パーソナルなアプローチ、独自の体験、消費者向けのオファーが、売上向上につながります。
自動車業界が直面している課題とは?
自動車セクター再編は、業界のバリューチェーンに広範な影響を及ぼしています。コロナ禍の影響で、サプライヤーが半導体を期限内に納品できず、生産ライン全体を停止しなければならなかったことが報じられました。納品の遅れ、顧客の不満、売り上げの減少など、その影響は甚大です。
産業の基本構造が変化し続けているため、今後数年間で業界が新たな需要に対応できるようにするには、さらに迅速に順応する必要があるかもしれません。既存顧客を失うことなく次世代の消費者を惹きつけること、購買行動の変化、新たなイノベーション、サステナビリティなど、これまで述べてきたテーマに加え、いくつかのテーマが挙げられます。特にイノベーションの分野では、現在、世界で最も革新的な企業にリストされている自動車メーカーが1社しかないことが注目に値します。
これまで新車を買おうとする人は、物理的に試乗するための方法を検討する必要がありました。コロナ禍ではそれが困難になったため、数社の自動車メーカーはバーチャル試乗の仕組みを構築しました。バーチャル試乗というコンセプトはこれまでにも開発されていましたが、新車の購入者を逃さないためにもこの仕組みを一夜にして急いで実装しなければなりませんでした。
バーチャル試乗は、あらゆる年代の消費者の心に響くのでしょうか?若い世代は、実際の試乗をまだ重視しているのでしょうか?SitecoreはPublicis SapientおよびMicrosoftと共同で「Automotive Customer Report 2021」を発行しました。
「今日ほど変化のペースが速い時代はなかった。しかし、今日ほど変化が遅い時代も二度と来ないだろう。」 ジャスティン・トルドー カナダ首相世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でのスピーチ
消費者第一主義を成功させるには
企業の事業戦略や目標を達成するには、洞察力と経営陣による全面的なサポートが必要です。人件費を節約するためではなく、さまざまなチームや部門が最適に連携しているかを確認するためにプロセスやそれに関わるチームの役割を一度検証することをお勧めします。チームの全員が共通の目標に向かっていることを確認しましょう。
最適なベンダーを見つけることは非常に重要です。テクノロジーは進化を続けており、毎年新しいベンダーが市場に参入しています。ベンダーを慎重に選ぶことは、将来の戦略の基本となります。
顧客データの重要性は日々高まっています。貴社ではマーケティングに必要な顧客データや分析データをすぐに手に入れることができますか?特に顧客データについては、GoogleがサードパーティCookieのサポートを停止すると発表したこともあり、企業は「ファーストパーティデータ」を活用するための方法を迅速に見極めなければなりません。
先に述べたように、カスタマーエクスペリエンスの役割は重要性が高まっています。今後は、消費者とその行動から直接得たデータのみを使用し、優れた関連性の高いカスタマーエクスペリエンスを実現できるような技術を導入することが求められます。先進的な企業は顧客データを収集、分析、活用するためのテクノロジーであるカスタマーデータプラットフォーム(CDP)をすでに利用しています。
CDPを導入することで十分なデータが収集された段階で、パーソナライゼーション、最適化、A/Bテストを実行できます。これにより、目標やKPIを最短で達成することができるため、経営陣の信頼を得られることでしょう。小さく始めて、新たな「ユーザーエクスペリエンス」を生み出し、継続的に改善していきましょう。継続的な最適化こそが消費者の満足を高める早道です。
適切なアプローチと、それがもたらすメリットとは?
デジタルの成熟度を次のレベルに引き上げるには、お客様に一貫性のある、記憶に残るジャーニーを提供することです。適切なテクノロジー、関連性の高いデータ、迅速に進行できるプロセスを組み合わせて、優れたものを作り上げる必要があります。
マーケターは、プロジェクトにおける指揮者の役割を担い、成功に必要なあらゆる分野のバランスをとることが求められます。指揮者として貴社に最適なマーケティングテクノロジーを構成しましょう。SitecoreのコンポーザブルDXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)であれば、単一のソースから機能を組み合わせ、必要に応じてベンダーを越えてテクノロジーを統合できます。
Thomas Obermeier is Senior Value Engineer at Sitecore. Connect with him on LinkedIn