シームレスなユーザーエクスペリエンスを提供するには、シームレスな組織が必要です。 市場投入速度、クリエイティビティ、深層学習、1:1型パーソナライゼーションに集中的に取り組む組織が増える中、事業単位の優先事項にフォーカスできるようにするために、チームはいかにして部門横断的な協働を促進し、組織全体のワークフローを調整し、内部チーム構造をオーガナイズできるかを理解しなければなりません。

真のデジタルトランスフォメーションには、多くの場合、個別の部門、単位、サイロを含む構造から、全体でシナジーを生み出す構造への組織的なシフトが必要です。 デジタルエクスペリエンス管理に関するブログシリーズ(パート1はこちら)のパート2では、デジタルトランスフォメーションを成功させるためにビジネスが用いている組織モデルを解説します。


デジタルエクスペリエンス管理を成功させるための組織モデル

どんな企業にも合う組織モデルというものは存在しません。 構造に沿って戦略が策定されます。つまり、組織の戦略はひとつとして同じものはないのです。 しかし、様々なミッションに集中する部門が複数存在する組織の場合、デジタルエクスペリエンスプログラム管理には基本的に3つの組織モデルがあることはよく知られていることです。

基本的な組織モデル

 
  1. 独立型
    デジタルエクスペリエンス開発の初期段階において、多くの組織はさまざまな部門内で独立したチームを有機的に立ち上げていきました。 一般的に、このアプローチは拡張可能ではなく、ビジネスやミッションに大きな違いがあり、柔軟な合併・買収戦略のために独立性を維持する必要がある場合に限り有効であると言えます。
  2. 一括管理型
    均一的なビジネスを運営する企業(地理的に限定した組織等)は、デジタルエクスペリエンスチームやマーケティングプラットフォームを統一した、単一のマーケティングオペレーションセンターが有効だと言えます。 この形態のチームは、対象としている地域の要件が非常に似通っているため、さまざまな地域に効率的にサービスを提供することができます。
  3. ハイブリッド/マトリックス型
    デジタルエクスペリエンスチームにハイブリッド型の組織構造を導入する企業がますます増えています。 このアプローチでは、共有のインフラサポートや、マーケティングエキスパート/スペシャリストが集結する中央化された拠点が存在します。 事業部門は各顧客のニーズへの迅速な対応にリソースを集中させながら、一括管理型の機能やガイドラインを活用することができます。 

デジタルエクスペリエンスのリソースをどの程度一括管理するかは、次に挙げた複数の要素により異なります:

  • スケールメリット
  • ビジネスのコンテクストと戦略
  • 全体的な組織設計との整合性(製品的側面または地域的側面が優勢、等)
  • 成長戦略(迅速な技術革新、地理的拡張、買収の多様化等)

マーケティングオペレーションセンター

Accenture が実施した調査によると、アメリカの消費者の90%は組織がバラバラで機能不全を起こしているため、ひとつのサイロから次のサイロへと移動を強いられ、その度に情報を入力せざるを得ない状況が生まれている、と感じています。 チームが自分たちを個々の単位として見なしている限り、シームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供することはできません。

エンド・ツー・エンドのオペレーションの導入を目指した、マーケティングオペレーションセンターの設立がますます増えています。 BrightTALK マーケティングオペレーションチャネル担当Gary Katz は、マーケティングオペレーションセンターは「プロセス、テクノロジー、ガイダンス、測定基準を活用して、マーケティング部門を収益/価値センター、成長牽引役、変革推進者、十分な説明責任を負ったビジネスとして運営しなければならない」と指摘します。

センターは、さまざまなチーム間の調整機構、共有のサービスセンターとしての役割を同時に果たし、マーケティングテクノロジーや、その他の顧客向けの投資や専門知識を共有する、という役割を担います。 さらに、センターはデジタルエクスペリエンスの取り組みを最適化し、ベストプラクティスを共有するための、ブランドや事業部門との協働を促す触媒としても機能します。 大規模なセンターには、チーフデジタルオフィサー(CDO)、デジタルストラテジスト、エクスペリエンスアーキテクツ、チャネルエキスパート、さらにリソース共有ベースで小さなチームをサポートできるデジタル/データアナリストが揃っている場合もあります。

マーケティングオペレーションセンターはデジタルエクスペリエンスプログラムの実行全体を担当している可能性があります。 一部の活動を一括管理する一方で、分散化されたチームにとってのメリットを高めるネットワークを構築し、効率的な導管をつうじてクリエイティビティを活かした制作や配信をサポートします。

Scott Brinkerが指摘するように、マーケティングオペレーションは財務的アカウンタビリティ、顧客との親密性、デジタルトランスフォメーションにますます集中する必要があります。 「信頼フェーズ」では (過去のブログ記事「組織のデジタル成熟度に合わせたデジタルエクスペリエンスマーケティングの役割の展開」をご覧ください)、マーケティングオペレーションは次のことに集中することができます:

  • 投資対効果 – 顧客の獲得、収益、売上総利益、営業利益、顧客の維持/支持に貢献する
  • 顧客との親密性 – 統合された顧客データ/情報を頻繁に更新し、デジタル戦略/戦術を分析し、導き出す
  • デジタルトランスフォメーション – デジタルマーケティングの有効化からデジタルトランスフォメーションの促進へと移行し、マーケティングをビジネスのように運営する

(ガイド全文では、デジタルストラテジスト、マーケティングオペレーション、コンテンツ管理等、マーケティングの役割を詳細にリストアップしています。)

マーケティングオペレーションセンターは、戦略的テクノロジーを活かして競争力を創出したり、現行のビジネスモデルからの切り替えを促進するための、イノベーション拠点としても機能します。 イノベーションを加速させる上で、これらアクティビティは高いレベルの独立性、外側から内側へのフォーカス、そして試行錯誤が認められる自由度を伴って運営される必要があります。

 

調整機構

組織は、効果的なハブ・アンド・スポーク構造の構築に苦慮する場合があります。 これには、スポーク(各拠点)に自律性を与えながら、戦略/戦術/データ/テクノロジーへの投資を連携させ、スケールメリットを活かすことが求められます。 ここで効果的なのが、調整機構です。

十分に統合が進んでいない領域では、臨時のミーティング、フォーラム、コミュニティを用いた情報の共有、アクションの調整、リソースの活用が可能です。 また、分散化された組織においても、基準やインセンティブを一律導入することが可能です。

より統合が進んだ領域では、職能/機能全体で管理やビジネスプロセスを形式化する必要が生じるでしょう。 さらに、責任を共有するマトリクスを作成し、プログラムの主要なアクティビティについて誰が責任者であるか、誰に説明責任があり、誰に相談すべきか、誰に連絡すべきかを明確にする必要があります。

全体的な統合プロセス

最後に、協働的な環境の中で、リードユーザーからエクスペリエンスの取り組みに関するしっかりとしたインプットを得て、パイロットプログラムを運営するための、顧客とパートナーで構成される諮問委員会を立ち上げる場合も考えられます。

 

eコマースのための組織的考慮点

eコマースの組織構造に関する考慮点は、組織一般に関する考慮点と似ています。 eコマースの組織構造には次のようなタイプがあります:

構造

説明

独立型eコマース事業部門(BU)

  • 独立型損益管理、CEO直属
  • ビジネスのさまざまな領域で小規模にeコマースを展開している場合に多く見られる 
  • デジタルエクスペリエンスを含む、機能部門を自ら管理
  • 需要創出や製品パートナー協定を自ら管理
  • 他のBUからのサプライチェーンオペレーションをアウトソースする場合あり

事業部門内にある独立したeコマース部門

  • 単一事業部門内の損益を管理、顧客のサブセグメントに集中
  • オフラインセールスとは別に、BU内のデジタルエクスペリエンスを含むeコマースの全機能を管理
  • ITやHRリソースを他のチャネルと共有
  • 他のBUとオペレーションの共有やアレンジメントのアウトソースを行う場合あり

事業部門内でeコマースセールスチャネルを統合

  • オフラインチャネルのセールス組織とは別にセールス機能を設置
  • カスタマージャーニーのオンライン&オフラインでの統合を進めるための、マルチチャネルビジネスモデル
  • eマーチャンダイジング、価格設定、プロモーションをオフラインセールス組織と調整
  • 共有/統合されたデジタルエクスペリエンス管理を活用(マーケティングオペレーションセンター)
  • 共有のIT/HRを活用
  • サプライチェーンオペレーションをオフラインチャネルと統合

 

3つめの構造には顧客中心性が備わります。 真のマルチチャネルエクスペリエンスの最適化に最もふさわしいこの構造は、導入する組織がますます増えています。 しかし、最初の2つの構造が依然として採用されている状況があり、その大部分は、顧客/競争を牽引する要素が大きく異なる場合や、合併買収に備えて柔軟性を考慮して独立性が設計されている場合です。

組織のデータ関連の責任

データの取扱いに関しては、適切な役割が関わるよう徹底することが大切です。 優れた意思決定は、ビジネス目標や使用事例、さらに顧客関係管理、eコマース、その他システム/データソースとの統合計画を明確に把握した上で行われるかによります。

一般データ保護規則やカリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)に関連した、プライバシー方針の広範な導入は共有の責任です。 ただし、法務チームの関与は必須となります。

マーケティングとITでは、データ関連の組織的責任は大きく異なります

スタッフ育成

デジタルエクスペリエンスのテクノロジーとオペレーションは急速に進化しています。 チームには、メンバーがベストプラクティス、プロセス、デジタルエクスペリエンステクノロジーを十分に身につけ、最新の開発に付いていけるようにする、学習アーキテクチャが必要です。

特に、エクスペリエンス最適化スペシャリスト、コンテンツマーケティング担当者、ストラテジスト、アナリストといったチームの主要メンバーには、デジタルマーケティングツールのための実際的なトレーニングが必要です。 トレーニングは複数の周期で行うことが最適です。 まずは、基本的な職能トレーニングから始めましょう。 チームがある程度経験を積んだら、さらに高度なトレーニングへと移りましょう。

デジタルエクスペリエンスプログラムは、従来のビジネスのやり方とは大きく違います。 コアチームを対象とした実地トレーニングに加えて、デジタルエクスペリエンスプログラムに関わるその他の役割についても高度なトレーニングを提供する必要があります。 これにより、こうした人材からもプログラムへのサポートや貢献を確保することができます。

全容は「デジタルエクスペリエンス管理: 組織とガバナンス」をご覧ください。 シリーズ最後の記事では、SBOSチームについて詳しく紹介します。こちらをクリック。

経験豊かなビジネスリーダー - Elan Bairが、ビック/スモールデータ、高度なオンラインアナリティクス、パーソナライゼーション、エンゲージメントの自動化を活用した、デジタルマーケティング、カスタマーエクスペリエンス、ビジネスパフォーマンスプログラムの計画/設計/最適化について説明します。 彼をLinkedInでフォローできます。