SitecoreAI™は、私が20年以上デジタル配信に携わってきた中でも、最も優れたDXPプラットフォームです。パーソナライゼーションの深さ、コンテンツインテリジェンス、エージェンティックワークフローはどれも実に魅力的で、移行を完了した組織にとってその可能性は計り知れません。
しかし、潜在能力と実行力は別物です。そして私の経験上、そのギャップの原因がプラットフォームにあることはほとんどありません。
2026年3月上旬にシドニーで開催された5回にわたるワークショップを通じて、私はColliers Internationalのグローバルデジタル・マーケティングチームと協力し、Sitecore XPからSitecoreAI™への移行に向けた戦略的かつ構造的な基盤を構築しました。ここでは、その準備作業の内容と、同様の移行を計画しているあらゆる組織にとってなぜそれが重要なのかを紹介します。
演出したい体験から始める
すべての移行はプラットフォームの選定から始まります。しかし、賢明な移行は、それよりもさらに早い段階から始まります。
Colliersは、UXやコンテンツ構造、移行の順序について決定を下す前に、より本質的な問いを投げかけました。このプラットフォームは、そもそも何を実現すべきなのか――という問いです。それはローンチ時だけでなく、18ヶ月後、最適化が進み、AI機能が本格的に機能している状態まで見据えたものでした。
ワークショップに先立ち、Colliersのデジタルおよびマーケティング部門のリーダー約30名を対象に実施したアンケート調査により、このプロジェクトには明確な指針が示されました。
76%
SEO・LLMにおける可視性を今後18か月における最優先事項として挙げた人の割合
56%
より質の高いリードの獲得を最優先事項として挙げた人の割合
64%
全体的な顧客体験を最大の摩擦点として認識している人の割合
#1
DX成功の最重要ポイント第1位:明確で共有されたビジョン
これらの優先事項はいずれも、単なるプラットフォーム移行だけで解決できるものではありません。適切な体験を設計し、適切なコンテンツを構築し、適切なデータを連携させ、そして高性能なプラットフォームが機能するために必要な基盤を整えることで初めて解決されるのです。
最初のセッションが終わる頃には、Colliersには共通の「ノーススター(目指す指針)」が定まっていました。それは、その後のあらゆる意思決定における共通の指針となる、合意されたひとつの方向性声明でした。
目指すべきゴールは明確でしたが、そこに至る正しい道筋が見えずにいました。戦略会議を重ねる中で、地域や部門を超えてチーム全体が結束し、共通の指針を確立することができました。この方向性の統一こそが、その後のあらゆるプロセスを加速させ、手戻りを減らす原動力となっています。
構築に入る前に成功の定義を明確にする
SitecoreAIは、チームが極めて正確に最適化、パーソナライゼーション、測定を行うためのツールを提供します。しかし、これらのツールが真の価値を発揮するのは、改善すべき指標を明確に定義した場合に限られます。単にトラフィックやエンゲージメントだけでなく、経営陣や財務部門が重視するビジネス指標、すなわちリードの質、コンバージョン率、オーガニック検索での可視性、コンテンツ効率、そしてエディターの信頼性といった指標が重要です。
2回目のセッションでは、Colliersのエクスペリエンス戦略を、オーディエンス別およびビジネス目標別に測定可能な成果へと落とし込みました。「顧客」「ユーザー」「マシン」という3つのオーディエンスグループを定義し、それぞれについてOKR(目標と主要成果)の策定を行いました。そして、経営陣が即座に理解できる言葉で、測定可能かつ有意義で、報告可能な目標と主要成果を設定しました。
この作業を通じて、ローンチ時に整備しておくべきデータ連携が明らかになりました。事後対応ではなく、プラットフォームのアーキテクチャを初日から測定に対応できるよう設計することが可能になったのです。
AIと最適化はローンチ後ではなく、最初から計画に組み込む
SitecoreAIのエージェンティック機能は確かに強力ですが、その機能はユーザーが導入する基盤に依存しています。構造、タクソノミー、そして連携データこそが、プラットフォームの機能を実際の価値へと変えるのです。
Agentic Studio は、ページ体験の構築とパーソナライゼーションを大規模に自動化でき、すべてのバリエーションを手作業で対応することなく、適切なコンテンツを適切なオーディエンスへと結びつけることができます。Sitecore.comチームは最近、これを利用してターゲットを絞ったABMキャンペーンを実施し、構造化コンテンツから100近くのパーソナライズされたページ体験を自動で構築しました。こうした取り組みが運用として成立するのは、それをサポートするようにコンテンツモデルが設計されている場合に限られます。
3回目のセッションでは、どのオーディエンスやジャーニーに最適化の投資を行うべきか、どのようなデータシグナルが必要か、そしてエージェンティックワークフローによるコンテクストに応じた配信に向けてコンテンツをどのように構造化すべきかを整理しました。これらは、プラットフォームの稼働後に検討できるような問いではありません。何を構築するかを左右する、重要な意思決定なのです。
データアーキテクチャとAIガバナンスを事前に設計する
AIやデータプライバシー、そして構造化コンテンツがAIシステムによってどのように利用されるかに対する不安は、ごく自然なものです。このような懸念は、同様の移行を検討している経営層から最もよく聞かれるものの一つでもあります。適切な対応策は、最初からその答えをアーキテクチャに組み込むことです。
SitecoreAIのModel Context Protocol (MCP) は、構造化コンテンツとエンティティ間の関係を、管理・統制された意図的な方法でAIシステムに公開します。コンテンツの意味や対象者をAIに推測させるのではなく、ユーザー自身が管理する統制されたタクソノミーとスキーマの枠組みの中で、そのコンテクストを明示的に提供します。
4回目セッションでは、現在と将来の理想的なデータアーキテクチャを整理し、データの所在、構築が必要な接続箇所、そしてMCPの機会をいかに円滑に実現できるかを特定しました。
AIやコンテンツの公開に関する不安は、どこでもそうであるように、私たちの組織でも現実のものとして存在しています。私たちにとって変化となったのは、その漠然とした不安を、明確な答えへと置き換えたことです。「これがフレームワークであり、これが管理対象であり、これが私たちが制御する部分です」というように。不確実性から構造化へのこの転換こそが、データアーキテクチャの取り組みが実際にもたらした成果でした。
移行前にコンテンツを構造化する
移行リスクは確かに存在しますが、組織が想定する場所にあることは稀です。SitecoreAIへの移行を適切に管理した場合のプラットフォームリスクは、対処が可能です。プロジェクトが予期せぬ事態に直面するのは、ほとんどの場合、コンテンツリスクの領域です。
構造が不十分でタグ付けも一貫しておらず、メタデータも不完全なコンテンツをそのまま新たなプラットフォームに移行してしまうと、AI、検索、パーソナライゼーションといった機能が本来の力を発揮できるタイミングが遅れてしまいます。不十分な構造のコンテンツを移行し、稼働中のプラットフォーム上で修正するのは、事前に整備してプログラム的に移行する場合よりはるかにコストがかかります。さらに、リビルドを終えた後で再作業が必要になるという事態も、避けたいところです。
Colliersは構築に先立ち、コンテンツ監査とタクソノミー構築に注力しました。グローバルなタクソノミーの策定、コンテンツモデルの合理化、そしてメタデータの大規模なクリーニングを実施しました。このタクソノミーは、検索、DAM、キャンペーン、アナリティクス、さらにはAIによるコンテンツ生成を支える基盤となります。これは単なる保守作業ではなく、インフラストラクチャなのです。
タクソノミーやスキーマの作業を第2フェーズに先送りすることもできたでしょう。多くのプロジェクトがそうしています。しかし、私たちがこれを最優先で取り組むことにした理由は、これらが単なる移行作業ではなく、検索、パーソナライゼーション、そしてAIのすべてを支える基盤であることを理解していたからです。まだページをひとつも移行していないうちに、その恩恵を実感できるはずです。
Colliersがこれを正しく行うことで得たもの
Colliersは反面教師ではありません。同社は、この規模と複雑さを伴う移行にどう取り組むべきかの模範です。しかし、より重要なのは彼らが何をしたかではなく、この作業を省略した組織が後になって何に気づくのか、という点です。
SitecoreAIへの移行におけるプラットフォームリスクは管理可能です。しかし、コンテンツリスク、データリスク、そして移行初日から抱え込むことになるタクソノミーの負債こそが、プロジェクトを停滞させる要因であり、単に立ち上げただけのプラットフォームと、真に成果を生み出すプラットフォームとの差が、知らぬ間に決定づけられるのです。
この作業を行うべきタイミングは、構築の前です。ローンチ時でも、最初の最適化スプリント中でもありません。それ以前です。
Colliersはこの点を重視して投資を行いました。問うべきは、貴社のプロジェクトが同じように対応できているかどうかです。